オークランド国際空港に33名が到着した。10ヶ月前と同じく、約束どおり、待っていたのは、マオリのコロ・カーマンさん。語感がいい、彼自身愛嬌があるので「コロ!コロ!」とついつい言ってしまう。今回は唯一の日本人スタッフアイさんも来てくれた。
初NZの参加者がほとんどだったので、カウリ博物館でまず、NZの歴史(特に森林伐採とカウリを中心としたNZ固有の樹木の過酷な運命)を知ってもらった。今回のツアーは普通のエコツアーではない。約1000年前にハワイキ(ハワイ方面の島)から渡ってきた先住民マオリの聖地に滞在し、森の神と崇められるNZ最大のカウリの巨木「タネ・マフタ」を中心としたワイポウアの森での第1回”Waipoua Forest Run & Walk 2008”を楽しむことが大きな目的だった。距離はランもウォークも12km。森のエネルギーを体で吸収させてもらおう・・・という意味も含めて、順位を競わない、森林レクリエーションとしてのイベントだった。日本からの参加者が全員完走、完歩したのは言うまでもないが、スタート、ゴール前後の様々な場面で地元住民(マオリを中心)との交流を楽しんでいた。運営ボランティアとしても参加していた老若男女も加わって、カウリなどの在来種を植林したが、共通の思いを胸に真剣に取組む子供たちの目をみると、将来の希望が見えてきた。
ところで、何度もNZに来ている私が感動したのは彼らの「歌」だった。初日、マオリの神聖な集会所「マラエ」にご招待いただいた際も、歌いながら出迎えていただき、長老の歌も披露いただいた。お返しといて、即興の下手な英語スピーチに加えて、口からでたのは「ふるさと」だった。全てがアカペラの世界で、童心に戻って熱唱したが、苦情でず、ホット一息つくことができた。森の神「タネ・マフタ」をナイトウォークツアーで訪ねた時はコロさんはじめマオリスタッフの立体音響効果を生かした歌の演出で、ホキアンガに伝わるカウリ伝説を洗練されたエンターテイメントとして楽しんだ。歌の合間に語られる言葉にも惹きつける内容に満ちていて、ナイトウォーク中、足元で踏みそうになったカウリの稚樹を見つけて、「タネ・マフタも最初はこれと同じだった。2000年の歳月を生き抜いてきた。だから小さな命でも大切にする・・・」と説いた。宗教には疎いが、日本の神道に共通する自然の理法を感じたし、祖先を敬うマオリの生き方を肌で感じることができた。
最終日、ホキアンガを去る際、タネ・マフタに挨拶に行ったが、誰からともなく、感謝の歌を捧げようということになり、「ふるさと」を歌った。こんな気持ちにさせてくれた人々や自然に感謝したい。そして、再度、「ふるさと」に戻ってきたい。
2008年夏至
エコツーリズム・プロデューサー
壱岐健一郎